いずもとそうりゅう

「いずも」空母改装論への雑感

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昨年(2017)末に海自のヘリコプター搭載型駆逐艦(判ってますって(笑))「いずも」を航空母艦に改装する案を検討中!ってなニュースが流れてましたね。

建造時から

全通甲板型の船型を持っているせいか、排水量(艦の大きさ)が帝国海軍の正規空母「翔鶴」「瑞鶴」に匹敵するからなのか、「いずも」と「かが」の姉妹は建造中や進水時などに「実質空母」とか「甲板さえ耐熱化すればF35B(海兵隊運用の垂直離着艦可能なタイプ)の運用が可能」とか言われてきました。

左側の人が悪意を込めてそんな事を言えば、コチラ側の人も期待を込めてそのように仰っていました。

実際に就役してみると、「いせ」「ひゅうが」の姉妹より一回り以上大きくて、自分で対潜戦闘をするには不向きだし、最低限の自衛火器しか搭載してないんで、本格的な海戦場では完全なる「防護対象艦」であることが判ってきました(って言うか、儂らはちゃんと知ってたゾ(笑))。

いずも

いずも
海上自衛隊ギャラリーからパクりました。

その代わりに、「いずも」「かが」は余裕のスペースが大きく、災害時の救援用には医療も含めて非常に重宝する設計だったんです。

この事は帝国本土から遠く離れて活動する艦隊があったばあい、あるいは本格的な上陸作戦(必ずしも強襲上陸だけを意味しません)を行う必要がある場合、「いずも」「かが」が非常に役立つことを示しています。

ひゅうが型護衛艦

ひゅうが型護衛艦
やっぱり軽快だな。

 

こんな事は、一般に開示されている仕様からいくらでも読み取れることなんですが、左右何方の方々もあまり関心を示さないのは何故なんでしょうね。まあ、コチラ側の人は説明させて頂くとだいたい納得してくださいます。
左側の人は、何らかの原因でオツムリの回り具合が私どもとは異なっておられますから、説明しても無駄です。ただ、そのワケのわからぬ屁理屈をメディアで垂れ流すから始末が悪いんです。

閑話休題。

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で、その「いずも」の改装計画です。私は、「F35B」の導入にそもそも反対(航続距離・ペイロードが極限される、運動性が落ちる、現状では使い道がない、など)なんですが、その辺りは別に議論することにいたしましょう。

F35

F35

「いずも」そのものは改装すれば「空母」としての能力を身に付けることが出来るんでしょうか?

絶対ムリやん

現在のところ、海上自衛隊最大の護衛艦である「いずも」は排水量26,000トン(満載)・全長248.0m・全幅38.0m。艦載機はヘリコプターばっかり最大14機。

一方、大日本帝国海軍の「オリジナル空母完成形」とでもいうべき「翔鶴」は排水量32,000トン(満載)・全長257.5m・全幅29.0m。艦載機は常用72機、補用12機。

翔鶴進水式前日の記念撮影

「翔鶴」
進水式前日の記念撮影

 

ね、ほぼ同じ大きさでしょ?なら、「いずも」は立派な空母になるのか?悲しいことに全くそうはならないんですね。
それはいろんな理由がありますが、手っ取り早く理解するには艦載機の大きさを比べてみるのが良いのではないでしょうか?

「いずも」が搭載するんじゃね?と言われているのはF35のB型。本来海兵隊向けの型です。全長15.40m、全幅10.67m、全高4.60m、空虚重量14,700kg、最大離陸重量27,200kg。
搭載するエンジンはA(空軍が運用する通常型)/C(海軍用の艦載型)と同じながら、エライ工夫で垂直離着陸(VTOL)を可能にしている優れモノですな。
空虚重量って言うのは、燃料や武装を搭載していない「自重」と思って頂いて間違いはありません。最大離陸重量は「この重さまでならVTOLできるよ!」と言う目安。この差の13トン弱が燃料+武装の重量となります。

南太平洋海戦で翔鶴から発艦するA6M3零戦32型

南太平洋海戦で翔鶴から発艦する零戦32型(A6M3)

 

それでは「翔鶴」型が積んでいた零式戦闘機はどうだったか?零戦には多くの改修型がありますが、そんなに大きさが変わっているわけではありません。ここでは52型を上げてみます。
全長9.121m、全幅11.0m、全高3.57m、自重1,856 kg、正規全備重量2,733 kg。

長さはそれほど違わない、ですって?幅が1.5倍になってるでしょうが(笑)。それよりも、自重・全備重量(この重さまでなら離艦出来る)が10倍ですよ。

この重量だけでも、同じにしようとしたらF35Bは7~8機しか積めません。メディアの軍事音痴どもが書いてる事ですから、あんまりマトモに取るのもナンですが、予定される10~15機なんて絶対ムリです。

エンガノ岬で攻撃される瑞鶴と護衛たぶ秋月と初月

エンガノ岬で攻撃される瑞鶴と護衛の秋月と初月(たぶん)

 

さらに、「空母」とは単純に「航空機を積んだフネ」ではありませんね。そう「空母」とは洋上の航空基地でなくてはなりません。航空基地である以上、航空機に対する整備・補給が出来なくてはなりません。
「翔鶴」型では一機当たり900キログラムで済んだ燃料+兵装が「いずも」は13000キログラム。これ、一回出撃するための数値ですからね。当然、複数回出撃のための燃料・兵装を搭載しておかなきゃなりません。
その分場所も取るし、重さも負担になるわけです。大きさだけでも、「いずも」は一般的な意味での「空母」にはなれません。

空母になったフネはあるけれど

そうは言っても、大日本帝国海軍だって各種の「改装空母」を運用してるじゃねえか!とお叱りを頂くかも知れませんね。

まあ、アレはですね。軍縮条約の影響が大きいのですよ。
空母はワシントン条約で早くも「補助艦」と位置付けられて、一艦あたりの大きさや保有比率が規定されてしまいました。ロンドン条約では一万トン以下の空母まで制限対象となってしまったんです。

そこで、帝国海軍が考え出したのが「空母に出来そうなフネをいっぱい造っておく」と言ういわば反則技なんです。同じような事はどこの国もやってますから、特に大日本帝国がズルいって訳ではありませんからね。

空母「千代田」

空母「千代田」

代表的なモノが「千代田」と「千歳」の姉妹で、簡単に言っちゃえば水上機母艦として建造されたんですけれど、有事にはすぐさま航空母艦に改装出来るように工夫されていました。
この二艦は昭和18年2月から空母への改装が実施され、船団護衛に活躍してレイテ沖海戦で沈没しています。

商船も海軍がお金を補助して建造し、戦時には空母に改装する予定のモノが沢山在りました。良く知られているのは「隼鷹」「飛鷹」の姉妹です。

終戦時の隼鷹

敗戦時の隼鷹

この姉妹は元々、日本郵船が昭和15年の東京オリンピックを当て込んで建造した、超が付くほどの高速豪華客船「橿原丸」と「出雲丸」でした。

モトが高速であるため、空母になっても25ノットと高速を発揮できましたが、空母としてはこれでも低速でありました。
そう、改装空母はどうしても何かの障害があって、正規空母(計画・設計段階から空母として建造されたフネ)ほどの使い勝手にはならないのです。

あ号作戦から帰投する隼鷹の艦橋

あ号作戦から帰投する「隼鷹」の艦橋

実際に、「隼鷹」「飛鷹」以外に艦隊に随伴して活躍した改装空母はありません(千代田・千歳などを無理やり連れて行ったレイテは除く)。
「改装空母」たちの悲しくも美しき生涯はまた別の記事にするとして、逆に空母として誕生したのに、他の艦種になってしまったフネってないんでしょうか?

流石ロイヤルネイビー(笑)

少なくとも、大日本帝国海軍にはそんな事例はありません。電脳大本営調べ(つまりええ加減、って事です)では世界の海軍を見渡してもまず無いでしょう。
これから紹介させて頂く大英帝国の空母を除いては、ですが。

ドイツの潜水艦隊の脅威に直面した大英帝国は、CAMシップやMACシップで急場をしのぎ、アメリカから護衛空母を大量にレンドリースで導入しようとしました。

グローリアス

グローリアス

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ただ、艦体随伴用の空母は「カレイジャス」「グローリアス」「アークロイヤル」「ハーミーズ」「イーグル」が次々に撃沈されて行きます。迷作装甲空母「イラストリアス」級が次々に進水していた時期ではありますが、ロイヤルネイビーは艦隊型の空母に不安を感じていたのでありました。
そこで計画されたのが「コロッサス」級の航空母艦です。

コロッサス

コロッサス
実は撮影時は大英帝国のフネじゃねえし。

「コロッサス」級はアメリカの「護衛空母」よりも優速で「イラストリアス」級よりも小型、いわば「艦隊随伴用の軽空母」と言ったところを狙った設計でした。思い切って言ってしまうと、「イラストリアス」の特徴の装甲はナシにして排水量を半分にし、作りやすいように船体を商船構造にした「似非艦隊空母」です。

ところが、出来上がって見ると意外や意外!ロイヤルネイビーにとっては使い勝手の良い、経験の無い他国海軍でもなんとか使える「優秀空母」だったのであります。
戦後はいろんな国に輸出されて活躍するのですが、それはまた別のお話。

パーシュース

パーシュース

そんなコロッサス級ではありましたが、造りやすいと言っても建造には2年近くを要しました。結局16隻計画されたコロッサス級のうち、戦争に間にあったのは4隻だけ。これだけ見れば「何やってんだか、大英帝国海軍」なのでありますが。

さすがに海軍の本家本元・ロイヤルネイビーだけのことはございまして、「国王陛下の航空母艦」を無駄にすることは無かったんですね。コロッサス級のうち2隻を「航空機整備艦」として竣工させちゃうのであります。

航空機整備艦と申しますのは、イギリス海軍が「ユニコーン」で試みた新艦種で、空母の搭載機数は縮小しても、航空機への補給・整備の提供に万全を期したフネ。「ユニコーン」が役に立ったんで、4番艦「パーシュース」と5番艦「パイオニア」を空母から「航空機整備艦」に設計変更したのでありました。

パイオニア

パイオニア

空母の「洋上の航空基地」と言う真の意味を理解できていたロイヤルネイビーだからこその英断だと言えるでしょう。

さらに用途変更して

褒めてはみましたが、「パーシュース」の就役は1945年10月。ぜんぜん間に合っとらんじゃん。
それでも11月には太平洋「戦域」に派遣されて、イギリス太平洋艦隊の航空機整備に活躍したことになっています。
翌年いっぱいは極東で活動を続け、「パーシュース」は飛行機を満載して本国へ帰りました。

それで「パーシュース」は予備役に。つまり、戦争に勝った後の飛行機を拾い集めて本国へ連れて帰った、それだけのたった1年の現役生活で終わった筈だったのですが。

ところが、一つの大発明が「パーシュース」を現役に引き戻すのでした。1950年、「パーシュース」は甲板の上に(甲板に埋め込んで、じゃなくて)新開発の「蒸気式カタパルト」を装備して現役に復帰したのであります。

空母としてではありません。「カタパルト実験艦」として、です。

「パーシュース」を使ったカタパルトの実験は笑っちゃうようなレベルから始められました。

始めは軽い台車みたいなモノを撃ちだすことから、だんだん重さを増やしていきます。様々なシチュエーションで同じことを繰り返し、飛行機の重量を十分に撃ちだせることを確認すると、実機に移ります。

この時、忘れられなかったのが台車への衝撃の掛かり具合で、これこそが「スチーム・カタパルト」が開発された主な原因なんです。

FA-18の着艦

FA-18の着艦

もっと言えば、我が海軍が重用した「火薬式」がついに空母では使えず、小型・低速の改装空母群が戦力化出来なかった(航空機運搬艦・輸送艦・船団護衛艦としてはそれなりに活躍しましたが)主要な原因でもあります。

95式水偵が5500トン軽巡(艦名不詳)から射出される。吹流しで風向きに注意

火薬式カタパルトで射出される95式水偵。
母艦は5500トン軽巡と推定しますが、艦名は私にはムリ。

 

火薬式や圧搾空気式に比べて、蒸気式はゆっくり(衝撃少なく)スタートして素早く加速出来ることが繰り返し繰り返し確認されました。さらに「パーシュース」の実験で最適な蒸気圧の加え方(最初はこれくらい、次の瞬間に圧を高める/低める、などでしょうが、これは今でも軍事機密の最たるものでしょうね。電脳大本営に判るハズがありません。ご存知なら、支那に高く売れますよ)を「発見」します。

スピットファイア

超名機「スピットファイア」の艦載型が「シーファイア」
なんか間違ってねえか?大英帝国。

 

ココまで来て、次は英国の持つ艦載機すべての型を集め、主翼を切り落してしまいます。少し軽くなりますので、その分の重りを積んだ「翼ナシ機」を次々に射出。
続いて、ついに、ちゃんとした機体を射出。やっとパイロットを乗せて射出。

海軍の本家は、要らなくなった元空母を見事に活用して、スチーム・カタパルトを開発したのでありました。

カタパルトがちゃんとしてないと、艦載機の開発にも支障が出ちゃうんですよ。我が海軍の艦上機が、着艦の際に空母甲板上のアレスティング・ワイヤに引っ掛けるフックその他の強度に大いに悩まされた事は皆さんご存知でしょう。

鳳翔艦上での制動鉤を外す作業機体は10式2号艦戦

「鳳翔」艦上での制動鉤を外す作業
機体は10式2号艦戦

フック廻りだけじゃなくて、それを支える部分も強化してやらなくちゃいけないので、結構な重量になるんですね。カタパルト射出となれば、それ以上に余計な構造材を配置して強くしなけりゃいけませんから、「ソフト」に押し始めて、強烈に加速してくれるスチームカタパルトがどれほど大切か、判ろうというモノじゃありませんか。

ロイヤルネイビーの開発したスチーム・カタパルトがあったればこそ、空母はこの後おおいに発展・大型化するジェット機を運用し続けることが出来たのであります。

蒸気はタダで出来るわけじゃない

運用者はロイヤルネイビーではありませんでしたけどね。

スチーム・カタパルトはノウハウごと(機械的な仕組みより、ノウハウの方が「技術的に」問題だったと思いますよ、今まで書いてきたように)アメリカ海軍に譲られ、そこで運命的な出会いを果たします。

「原子力空母」であります。何故「運命的」かと申しますと、「原子力」という動力の性質から、いつもお湯を沸かしておく必要があるからです。
フネを進めるためのタービンを回すスチームは十分以上に供給されていました。余った蒸気はカタパルトを作動させ手もまだ余裕だったのです。

一方で、原子力空母を持たないロイヤルネイビーは「スチーム・カタパルトは運用にカネが掛かり過ぎる」としてこれ以上の運用を放棄しちゃったのであります。
だって、「スチーム・カタパルト」を付けてると、ガスタービンや統合電気推進とか高効率ディーゼルなんかの魅力的な動力は使えないもんね。

逆に言うと、誘導弾(ミサイル)の発達(の見込み)のおかげで、空母ってもんの制海空権に果たす役割が低下しちゃってたんですね。
別に、護衛戦闘機を満載した空母が随伴してなくても、対空ミサイルがあれば、敵の攻撃機は撃退できますし、こっちの対艦・対地ミサイルで敵艦や敵の工場や飛行場などはもちろん、病院や小学校や幼稚園や老人ホームだって自由自在に攻撃出来ちゃいます。

わざわざ、原子力推進のプラットフォームを造って、これで空母を推進する、なんて研究はアメリカみたいな金満国家だけに赦された贅沢って事なんでしょう。
原子力空母を造ってしまうと、必然的に艦齢が長くなり、艦載機も更新してやらなくちゃいけないし、アビオニクスだって何回か新しくしなきゃいかんでしょう。金が掛かるったらありゃしない。

そうまでして「スチーム・カタパルト」付きの航空母艦を運用しよう、なんて奇特な国ではなかったんですね、大英帝国。

じっくり造れば良い

では、アメリカがあくまで空母を中心とした艦隊を世界中に展開できるように維持してきた理由。大英帝国が止めちゃったほどお金が掛かるのに。
冷戦期はもちろんソ連の脅威に対抗して、味方の国々に「いつでも助けてやるぜ!」って言うアピールの意味合いが大きかったでしょう。その後はもう惰性としか言いようがない。

「いずも」を空母に!の話は、私は政府か防衛省のスジが上げたアドバルーンだと思っています。どうも、賛成派も反対派も過剰反応しちゃって、すぐに改装とはいかないような形勢に思えます。

まあ、これで良いんじゃないでしょうか。空母を造るな、とは申しませんが、やるならアメリカの空母を上回る性能で、3~4隻一気に造らんとねぇ。もち、電磁カタパルト装備して。

早々、最後になりますが現代空母にカタパルトと並んで必須の装備「アングルド・デッキ」。これも「パーシュース」の姉妹艦を使って初めて実験された事を紹介してこの項、終わることに致します。

間にあわなかった空母たち、実は空母界に大きな貢献をしていた、と言うお話でございました。

今回、「いずも」の改装話であわてて書きましたので、かなりとりとめの無い文章になりました。そのうち書き換えると思いますので、ご容赦下さい。

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