大艦巨砲主義イラスト

「大艦巨砲」があるのに、なぜ小艦巨砲はないのか?

2017/07/09

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「砲艦外交」と言う言葉がありましたね。
支えたのは大艦巨砲いわゆる「主力艦」の群れ。
デカい船体に巨大な大砲を積んで分厚い装甲をまとった恐竜です。

じゃあ、小さいカラダに大きな大砲の艦はなかったんだろうか?と言う電脳大本営らしい、と自負する企画でありんす。

フネに積む巨砲とは

史上最大の巨砲を積んだのは帝国海軍の大和級。主砲は皆さんご存じの通り45口径46センチ(18インチ)砲です。
いっぱいあります、大和型の模型
以下は念のための確認です。

「45口径」というのは砲身の長さで、口径46センチの45倍の長さがある、と言うことです。
射程距離などは砲身長にも左右されるんですが、「巨砲」と言う場合に基準をひとつだけに絞ると、やはり「口径の大きさ」になるでしょう。

確認は以上です。

「こら、沢渡!カール臼砲を持ちだすんじゃねえだろうな」とのお叱りもありそうですが、違いますよ。ちゃんと艦って言ってるでしょ。
1/35 カール重自走臼砲 初期型/鉄道運搬車

フネにはその用途に応じていろいろな大きさがありますね。
同じ口径の大砲でも、積んでるフネの大きさによって大きく見えたり、小さく見えたりしますよね。

つまり、フネに積む大砲って言うのは「フネの大きさに対する口径の大きさ」で巨砲か否かが決まる、と言うのがこの項での屁理屈の"キモ"であります。

卑猥な例えになってしまいますが、大柄な女性と小柄な女性が同じサイズのバストだとすると、どっちが巨○に見えますか?ってことですね。

巨砲指数の発見

こんな時は、全体に対する対象物の大きさで判断すればよいっ、て言うのは文句の付けようのない常識でありましょう。

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軍艦の場合、その大きさは「排水量」で表されます。
排水量と言ってもいろいろあるんですが、そこは別の記事を見ていただくとして、大和の基準排水量は64,000トン、主砲の口径が18インチ×九門。

体積は縦×横×高さ、すなわち長さの3乗で考えなければいけませんから、
64000÷(18の3乗×9)=1.22

うむ、これはいけそうじゃないですか!

永遠のライバル、アメリカの戦艦も見てみましょうか。
アイオワ級は基準排水量は45,000トン、16インチ砲×九門
45000÷(16の3乗×9)=1.22
コチラもいっぱいあります。アイオワ級戦艦の模型
同じ数字だ、素晴らしい!これは使えるぞ。

われながら、すごい発見じゃないでしょうか。

この【排水量÷(主砲口径の3乗×門数)】を仮に「巨砲指数」と呼ぶことにいたしましょう。

巨砲指数が小さいと、艦形に比べて大きな大砲を搭載してる、と言うことが出来るわけでありますね。
よく言われる「実は大和型はコンパクトに作られた戦艦だよ」と言うシッタカ解説も、ちゃんと裏付けできるじゃないですか。

もっとも、巨砲指数が大きい(ムネじゃない、大砲の比率が小さい)ほど艦の余裕がある、ともいえますが。

艦名 排水量
トン
主砲口径
インチ
門数 巨砲指数

大和(日) 64000 18 9 1.22
アイオワ(米) 45000 16 9 1.22
ヴァンガード(英) 44500 15 8 1.65
ビスマルク(独) 41700 15 8 1.54


妙高(日) 10000 8 10 1.95
ノーザンプトン(米) 9006 8 9 1.95
サウサンプトン(英) 9100 6 12 3.51
ラ・ガリソニエール(仏) 7600 6 9 3.90
天龍(日) 3230 5.5 4 4.85
夕張(日) 2890 5.5 6 2.89
ヴェスヴィウス(米) 945 15 3 0.093

 

 

「天龍」と「夕張」

注目すべきは、軽巡「天龍」(5500トン級への導火線になった名艦)と、同じ軽巡の「夕張」でしょう。

「夕張」は皆さまご存じのように、天才・平賀譲の出世作です。

3000トンの小柄なバディに強武装とわが海軍の精神をほど良く詰め込んだ軽巡。
この艦から、世界に冠たる強武装の「条約型1万トン級重巡」が産まれてくるわけであります。

巡洋艦は雷装や航洋性、航続力に速力なども求められます。
そういうものを(雷装は別か)犠牲にした「巨砲」であることがよくわかる数字だと思います。

天龍の方は何かと余裕のある設計で、明らかに夕張とは違う方向を目指していることが、巨砲指数からも伺えると思います。

いかん、自分の主張に合致するんで、ついマジになってしまいました。

大和以上の巨大戦艦も

この「巨砲指数」を使えば、大和以上の巨大な主砲を持った大戦艦がどんな大きさになるかも計算できてしまうのです!

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仮に係数を1.2とし、大和級と同じ9門搭載艦を計算してみましょう。
20インチ砲戦艦で1.2×20の3乗×9=86,400トン
22インチ砲戦艦を造るなら、 1.2×22の3乗×9=114,998トン

現代の原子力空母並みで22インチ砲が九門積めるんですね。
すっごく魅力的に思えます。

さて、本題に

上の表に紛れ込ませておいた、「ヴェスヴィウス」をご覧下さい。
945トンは数字が抜けてるワケではありません。本当に945トンなんです。

ねっ、あったでしょう「小艦巨砲」。

巡洋艦の欄に入ってますが、間違いじゃありません。
米海軍の類別で「巡洋艦」になってましたから。

ビスマルクと同じ15インチ砲搭載、これも間違いではありません。
たった3門ですけどね。

巨砲指数はなんと0.093!
大和やアイオワをはるかに陵駕しています。

もし、ヴェスヴィウスと同じ「巨砲指数」で、大和と同じ18インチ砲を3門搭載した艦を造ろうとすれば1627トン、駆逐艦に搭載できる計算です。

このヴェスヴィウスこそ、電脳大本営的な「世界一の巨砲艦」であります。

巡洋艦「ヴェスヴィウス」の画像を

では、ヴェスヴィウスの姿を紹介申し上げましょう。

巡洋艦ヴェスヴィウスVesuvius

巡洋艦ヴェスヴィウス

艦首のすぐ後ろに三連装15インチ砲がごらん頂けますか?
艦の全長が80メートルほどですから、砲身長はそれほどありませんね。

ヴェスヴィウスの砲尾部分

ヴェスヴィウスの15インチ砲砲尾部分

三連装とは言いましたがヴェスヴィウスに砲塔は無く、砲身が直接甲板を貫いて、一層下の甲板で装填を行います。

筒先を左右に振ることは、とても出来そうも無いですね。

ヴェスヴィウスの砲口部分

ヴェスヴィウスの甲板から生えた15インチ砲

甲板上はこんな感じです。
これでは仰角も付けられません。

ですから、艦そのものを動かして照準したものと思われます。

砲弾は重量445.5キログラムもあり、30発搭載なんだそうですが一門あたりなのか、全部で30発なのかは不明です。

ダイナマイト砲

さて、ヴェスヴィウスが無理やり巨砲を積んだわけを説明しなければなりませんね。

ときは1883年、ノーベルさんがダイナマイトを発明した直後であります。

当時は「TNT火薬」や「下瀬火薬」などが発明される前で、砲弾の炸薬には黒色火薬が使われておりました。

ダイナマイトは、黒色火薬などよりはるかに爆発力が大きいんですが、砲弾には使えませんでした。

ダイナマイトは衝撃によってすぐに爆発してしまうニトログリセリンを、安定剤に浸み込ませ簡単には爆発しないようにしたものなんですが、砲弾に充填して発射できるほどには安定していないからです。

そこで新興国アメリカの発明家、メドフォードさんが素晴らしいことを思いつきました。
「火薬で乱暴に飛ばすからいけないんだ!空気圧でそっと押し出してやればダイナマイトを使った強力な砲弾が撃てるぜ!」

そうです、メドフォードさんが発明したのはでっかいエア・ガンだったのです。
このメドフォード発明についてはシムスさんと言う発明家も絡んでる様なんですが、良く判りません。
シムスさんの方は、この後に我が国とも大きく関係してくるのですが、それはまた別のお話にいたしましょう。

メドフォードさんはこの発明を陸軍に持ち込んだのですが、なぜか海軍が採用してわざわざ実験用にフネを作ってみたのが「ヴェスヴィウス」だったわけですね。(陸軍でも使ったんですが、ここでは割愛します)

空気で押してやるんなら、衝撃やら反動などのややこしいことはあんまり考えなくても良さそうです。
なら、なるべくでっかい砲弾を「押し出して」やった方が効果的です。

ヴェスヴィウス、出撃!

さて、この世界一の巨砲艦は実戦に出ています。

米国がスペインと戦った米西戦争(1898年)です。

この戦争は、開戦原因の一つが「捏造新聞記事」だという私たち日本人には聞き捨てに出来ないものですが、それはこの記事の主題から外れてしまいます。

米西戦争の戦場はフィリピンとキューバだったのですが、ヴェスヴィウスはキューバの首都サンチャゴへの砲撃を行ったのでした。

画像でご覧いただいたように、ダイナマイト砲の砲身は固定されていますから、照準は艦そのものを動かすしかありません。
陸上の動かない目標を狙うのがちょうど良かったんじゃないでしょうか。

ダイナマイト砲弾の威力

実戦ではヴェスヴィウス艦長の操艦よろしきを得て、ダイナマイト砲はサンチャゴ市街を見事に捉えました。
空気砲だけに発射音も小さく、どこからとも無く飛来する砲弾の大爆発に、スペイン軍はびっくり仰天だったそうです。

しかし、空気のチカラでは限りがあります。
あまり重くなると飛びませんから、445.5キロものダイナマイトを、徹甲弾のように包むことは出来ませんでした。飛翔中にバラけてしまわないようにしておくのが精一杯。

爆発そのものは大規模でも、爆風は四方八方へ拡散してしまいますし、砲弾の破片による殺傷効果もありません。
唯一、開いていた窓から建物内に飛び込んだ砲弾だけが被害を与えたに過ぎませんでした。

発射にしても、一度発射するとコンプレッサーで空気を貯めるのに時間がかかり、砲術科員はそうとうイライラしたようです。

戦争が終わると、ヴェスヴィウスからはダイナマイト砲が撤去され、水雷練習艦にされてしまったのでした。

やっぱり巨砲は巨艦がお似合いでした。

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